レビュー -世界史とつなげて学べ 超日本史 日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史-

 

最初は、遺伝子の話から始まって、?だったが、遺伝子によって日本人がどこから来たかを明らかにする視点は斬新だと感じた。遺伝子が完全に解明される以前は、かなり混沌とした議論がなされていたようである。

 

また神話を現実の話に引き寄せる辺りがとても面白かった。

例えば 『古事記』における、高天原から降りてきた天上人は、主に大陸からの移民であり、土着民との政権交代の様子を描いているという解釈。これは、天上人と土着民が平和的に政権交代をした様子を記しており、その結果、天上人を祀る伊勢神宮と、土着の神を祀る出雲大社が並存することになった。そして、それは現在も続いている。神話や伝承は、事実を何かしらになぞらえて作られたもので、それを逆に変換してやると、とても面白いのだと思った。この手の話が、いくつか述べられている。

 

近代史と昔の歴史を類似点で支度しているでも面白いと思った。

例えば隋(中国)が滅びた原因として、厳格な租税制度・官僚制度を徹底して、いわば古代社会主義を敷いたことが原因であるという話がある。つまり、

 

1) 民は重税によって勤労意欲を失い、税から逃れるために逃亡する。 

2) 中央政府は財力がなくなり、疲弊し、地方を支配する力がなくなる。

3) 節度使という制度を用い、地方に権限をすべて委任してしまう

4) 最終的に権力を得た地方が反乱を起こして、中央政府を滅ぼす

 

このループは、中国で何度も繰り返されている。日本の平安時代も、同様で、結果的に武士が台頭してくる背景となる。

 

 

江戸時代以前に日本人傭兵がアジア各国で活躍していたというのは面白かった。全く知らなかった。

確かに江戸になるにつれて時代が泰平の時代になり、武士は失業して浪人になった。

浪人がたくさんいるのは危険なので、海外に傭兵として派遣することで、食い扶持も確保し、治安も維持する。海外の戦闘で活躍し、戦闘経験が豊富な彼らが帰国するのは危険なため、次第に日本への帰国を禁じる。

一方で、アジアの植民地支配をしていたポルトガル、スペイン、イギリスは、日本人傭兵を喜んで雇い、戦争を繰り広げる。場合によっては、日本人同士の戦いもあった。

聞いたことはあるが、日本の鉄砲数は欧州のと引けを取らないくらい数があり、当時はかなりの軍事国家であった。そのため、植民地支配も不可能と断定され、むしろ中国制服のために同盟を結ぶ運びであったのは、面白い。

鎖国というのも、圧倒的軍事力があってこそできる。

 

 

ただし全体として、教養としてとても面白い。しかし、事実を確認することが難しいので、「こういう視点もあるのかぁ」くらいに思っておいた方が無難だと思う。大学入試などは、国が公認した事実に基づくもの、つまり教科書に従わないものは、不合格になるので。

まぁ、歴史というのは、いろいろな説があるものである。

 

最後に、歴史は繰り返す。

日本は

①先進国の技術を取り入れ、先進国を追い抜かしていく。

②その後自国の殻に閉じこもり、周回遅れになる。

③他国に圧倒され、自国が劣っていることに気づくと、また必死で技術を吸収していく。

 

この繰り返しである。平安時代、中世(主に鉄砲・軍事)、そして近代(文明開化)。というのが締めくくり。

 

今は、②かな。次も③できると良いけど。